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Written by Mark Talbot   
Saturday, 19 May 2007

祝・初ポイント獲得 マークのスペインGPレポート

過去最高のレース
マーク・タルボット 2007年5月16日(水)

トラックから熱気のもやがあがっている。陽炎をたてながらマシンが私のほうに向かってくる。一台はピットレーンから、もう一台はメインストレートから。私には色の違いは分かったものの、一台がもう一台の先を走っていたかどうかは分からなかった。ぼやけたマシンの形がよりはっきりしてくるにつれて、私には差が広がるのが「見えた」。プッシュは十分だった。琢磨の赤と白のマシンがフルスピードで私の視界に入ってきた。ルノーはそれより少し遅い。両者が私の前を過ぎ去ったときは、タクが前を走っていた。残り5周で、琢磨は新チームにとって初となるポイント圏内へ浮上したのだ。グランドスタンドFでは(スペインではトリビュートFと呼ばれる)、Zesareと私が身を乗り出して叫んでいたものだから大勢の人たちをぎょっとさせてしまった。タクが走りすぎていったときには飛び上がり、手を振って、絶叫ともいえる声援を送った。まるでワールドチャンピオンシップを獲得したかのように感じられた。歓喜の涙が目の奥に溜まり始める ... 残り5周、彼は本当にフィジィの前をキープできるだろうか。

二日前 ... フリー走行:
タクとアンソニーは共にフリープラクティスセッションで絶好調であった。金曜日のセッションでは2人とも、前輪を守りながら後輪を最大限に活用することで生まれるバランスを説明することでマシンの挙動について多くの重要かつ的確な情報をエンジニアに報告していた ... なので予選セッションに向けてのマシンセットアップは、チーム全体にとって彼らが達成しようとしていることにとても奮起していたことを表していた。私はエンジニアリング・マネージメントの分野で何年も仕事をしてきて、チームワークがどのようなものか理解していると思っていた。だが実際はそれほどでもなかった。このチームの人々がマシンを準備していく姿を見るのは、まるでよくリハーサルを重ねたバレエを見ているようだった。全員が次に何をすべきか、どこに何を配置するかを完璧に理解していた。彼らはほどんと言葉を交わさない。誰かの邪魔にならぬよう脇に移動する代わりに、その誰かを手伝うのだ。これが真のチームワークである。特にある一人の男性に言及したい - バーニーだ。この男は私が出会った最も生産的な人々のひとり。彼は常に忙しく、常に手助けをしている。皆が何らかの形でバーニーに頼っている。彼はタクのエンジニアたちに力を貸すのと同じようにタクにもそうするのだ。

土曜日 ... 予選:
第一セッションは比較的簡単で、両ドライバーが第二セッションにすんなりと進んだ。悲しいことに、第二セッションでタクが燃料のピックアップのトラブルに見舞われ、アントは下側にダメージを受けてダウンフォースを失ってスピンアウトしてしまった。なので彼らはミッドフィールドの位置からのスタートとなり、少し残念だった。ミッドフィールドで「少し残念」と言えるところまでくるのに、SAF1はどれだけの道のりを歩んできたことか。去年は我々はミッドランドと競い合うだけであった ... いまや我々はいくつかの大きなチームにとても近づいてきている ... そして、ホンダ・アグリ・ホンダ・アグリというようにワークスチームの間に位置している。Zesareの友人はスーパーアグリがよい結果を残してきていることに少々驚いていた。私たちは鼻が高かったが、不安でもあった ... タクに起こった問題は何だったのか。エンジン交換の必要はあったのか。ありがたいことに、結局は完全修復可能な燃料ピックアップの問題であった。ふう。

日曜日 ... 決勝:
スタートがやり直しになり、マシンは二回目のフォーメーションラップへと出て行った - 観客はそれに興奮し、また混乱した...。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつと赤いライトが点灯し、行け!行け!行けええ!第一コーナーでアロンゾとマッサが軽く接触し、アロンゾが後退。残念ながらタクも後退し、2台のホンダが不運なルノーを追い越していった。12位から13位に下がったが、ゆっくりとしかし確かに運が向いてきた。タクは数台の上位チームとペースを保ちながらよじ登るように順位を上げていった。彼のラップタイムは上位チームのそれとさほど変わりなかった - 長い間、彼は周回遅れにならなかったし、周回遅れになったときも、ハミルトンは彼を追い越したときに大した印象を残さなかった。純粋な速さをもってして2台のホンダの前を走っていた。ホンダはお互いに衝突したことでこちらを手助けしてもくれた。そうしてジェンソンがノーズ交換のためにピットインし、最下位で復帰した。その後ルーベンスがピットインしてタクが前に出た。タクは自分がピットインをする番になったときにルーベンスを追い越せただろうか。答えはイエスだった。タクはピットインしてもルーベンスに対してアドバンテージを確保しつづけた。これでフィジィが8位、タクが9位。タクがルノーを追いかけるにつれてタクとルーベンスの差は開いていった。

そしてそれが起こった。

残り20周になったあたりで、私はルノーチームがフィジィにもう一度ピットインしなければいけないと伝えているのを聞いたのだ!私がすぐさま立ち上がって、「フィジィがピットインしなくちゃいけないんだって!!」と叫んだので、私の周りの人々はみんな、グランドスタンド全体がぎょっとしていた。即座にZesareと私にはタクにポイント獲得の好機があることが分かったのだ!カンガルーTVなしでは、レース観戦の楽しみがずっと少なかっただろう。なぜならフィジィが再びピットインしなければならないことが我々にはわからなかったからだ。タクのセクタータイムも見ることはなかった。ありがとう、カンガルーTV。我々は期待と恐怖の中で観戦していた ... フィジィとタクの間隔は少しずつ広がっていた。18秒。20秒。タクは十分に差を詰めていられるだろうか。周回が進み、私はフィジィがもしかしたらピットインしないかもしれないと考え始めた ... そして私の祈りが通じたのだ。フィジィがピットインし、タクはフルスピードで駆け抜けていった。

ピットストップは常に迅速だ。しかし、自分が応援するチームがホームストレートを駆け抜けているのを待っていると、20数秒は一生のように長く感じられる。ついにマッサが視界に入ってきた - 私は次に来るクルマがタクだと知っていた。しかし、フィジィがピットレーンを出てくるのが見えた。果たしてタクはやってのけるだろうか。これはかなりぎりぎりになるぞ。フィジィはタクより前にいた - が、タクはフルスロットルで、最高速度で、そしてマシン一台分の差をつけてルノーを追い越し、滑り込むように第一コーナーに入っていった。

残り5周。どうやったらスーパーアグリが去年のチャンピオンを追い詰め続けられるのか。フィジィはすぐに順位を取り戻すだろうか。タクはまるでバンシー[訳注:家族に死人が出ることを泣いて予告する女の精霊]のように走っていた。彼は何故私たちが彼のレースを愛するのかを見せ付けていた。彼は寸分たがわず完璧だっただろうか。いや、そうは思わない。しかしスムーズさは他のドライバーにまかせて、タクは情熱で走るのだ。情熱こそがグランドスタンドFで分かち合われていた。Zesareは最後の4周を観ていられなかった。私はホームストレートの地平線から目が離せなかった。期待を持って、願って、祈って、そして赤と白のマシンが黄色と青のマシンの前に霞を抜けて来るのが見えた。一周ごとにテンションが上がって、私はそれが起こることを確信してくっくっと笑っていた。だがついに信じられるようになったがためにタクに不運をもたらすようなことはしたくなかった。残り周回数が1になり、タクは「よい」コンマ数秒差でまだフィジィの前を走行していた。

フェラーリのマッサがチェッカーフラッグを受けてから私は待った ... フィニッシュラインはいまだ熱気でぼやけているが、そこで私は最もファンタスティックな光景をみた - 佐藤琢磨の赤と白のマシンが、ピットウォールに並んだ彼のピットクルーの喝采を受けていた。Zesareと私はスタンドの最前列、我々のために誇らしげに揺れていたスーパーアグリの応援旗を掲げていたところに駆け寄り、タクが通り過ぎていくのを待った。タクは近づいてきたときに、速度を落として、私たちをまっすぐに見て意気揚々と手を振ってくれたのだった。鳥肌が立ち、得意な気持ちでいっぱいになった。

生まれて初めて、私はシャンペンをレースに持参した。そして今がそのボトルを開けるときだ。勝利の快感、圧倒的な喜び、そしてシャンペンの炭酸が鼻に上がってきた。ファンタスティック!私はまた応援旗をシャンペンで清めた - 誇らしげに揺れながら、この旗もたくさんのレースを経験してきた。今回が私たちふたりにとってもっとも誇らしげな瞬間だ。私がこれまでに観たレースのなかで、今回のレースほど感情的になったことはない。これまでタクのドライビングを数年間みてきたが、今回は何かが違った。これほどドライバーとチームを誇りに思ったことがあっただろうか。行け、タク!

Last Updated ( Saturday, 19 May 2007 )
 
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